引き継いだ農場

切り売りではなく継承

 新規就農ですが、研修をさせていただいた農場そのものを引き継いだため、その農場のいいところも悪いところも含めて引き継ぎました。
 素人が始めるにはマネジメントができるような生産規模ではなかったこともあり、当初は規模の縮小へと向かいましたが、抱えた借金も大きく、死に目を見ることになりました。

実は恵まれた生産環境

 北海道で農業というと地平線の見えるような畑の一角に家があってというイメージが強いですが、うちは山の上です。石狩平野を見下ろすことができる山の上にあり、日の出から日没まで日の光を遮るような大きな山なども周りにはありません。
 日中は風が吹いていることが多くて、空気はよどむことがありません。朝晩の冷え込みは山の気候と同じできつく、真夏でも10度を切ることもあります。朝晩に凪の時が時々あり、冷え込んだ夏の朝は畑全体が雲の中に入っていたり、雲海を畑から見下ろす時もあります。
 山を開いて作った農場のため、畑の土はほとんどが黒土で水はけもよく、作物を作るには良い環境だと思います。
 山の上ということで、昔は水を確保するのに苦労したそうですが、先代は敷地内に自分たち専用の巨大なため池を作りました。雪解け水だけで春には満水となり、危うい年もあったそうですが、これまでシーズン中に枯れたことはないそうです。


 先代からは栽培技術だけではなく、こういった水のこと、風のこと、そして畑のくせなども学びました。人と比べれば不利なところもあるかもしれませんが、引き継いだものは引き継いだものとして活用し、現状の生産基盤として維持発展させたいと考えています。

土を作る、維持する

もみ殻くん炭


 毎年秋に、ビニールハウスの中でもみ殻を積み、くん炭を作って散布しています。保水性の確保に役立ったり土壌中の微生物の棲みかともなったりします。くん炭作りの傍らでジャガイモを焼いて食べるのも、我が家の秋の風景となっています。

米ぬか、稲わら、もみ殻、豚ぷん

 土つくりの資材として、米ぬか、稲わら、もみ殻も多く使っています。
稲わらはメロンやスイカの畑の通路に敷き、籾殻はミニトマトの畑の通路に敷きます。米ぬかはメロンやスイカの肥料として使いますが、秋の片付けの時に、通路の敷きわらやもみ殻と混ぜて土に戻します。別の場所では米ぬか、籾殻、豚ぷんを混ぜて堆肥を作り、発酵の状態を見て畑に入れます。

土つくりの材料は近場から

 化成肥料なども購入して使っていますが、くん炭のようなものによる土作りが進んで状態が良くなれば、そういったものへの依存度が下げられるのではないかとも考えています。
そんな将来のことも考え、土つくりに使っている米ぬかなどは全て近郊から頂いてきたり、購入してきています。豚ぷんはうちで買っている豚から。豚のえさはうちの野菜(メロンも)や地元で集めてくる残飯です。

緑肥も栽培

 北海道で作物を育てることができる期間はあまり長くなく、それを克服するためのビニールハウスというものがあるのですが、いろいろな作物を栽培していると、早めに畑が空くこともあります。そんな時には緑肥の種を落とし、土つくりの材料にします(土壌有機質の供給、土壌物理性の改善)。

同じものを作り続けない

 ビニールハウスという人工的な側面もある栽培環境だと、土にもそれなりの無理がかかるのではないかと考え、同じ作物を同じ場所で連続して作らないことにしています。労働力の配分や、販売先のことなど、いろいろな要素を考えつつ、毎年どのビニールハウスでどの作物を作るかという計画を立てています。ビニールハウスの外の畑でも同じような生産体系を構築しているところです。

栽培技術を磨く

楽しみ含めて多品目、多品種

 同じ作物を同じところで作らないため、労働力の配分バランスのために多品目の野菜を作っていますが、それぞれの野菜の中にもいろいろな品種があります。ミニトマト一つとっても、赤だけではなく黄色やオレンジ、紫や緑などもあります。楽しいからという理由もありますが、品種の違いは育て方の違いにもつながります。同じミニトマトでも、品種ごとの違いをみることで栽培方法の試行錯誤と技術の向上への近道にもなると考えています。

見に行く、聞きに行く

 自分の畑の中で作物と対話をしているだけでは、技術も独りよがりになりがちです。いろんな書籍も読み、インターネットで検索すればいろんな情報も出てきます。そういった情報も常に仕入れ続けていますが、一番の情報源は実際に見ること、聞いてみること。
 近場の生産者もいいですが、遠くにも見に行きます。気候が違うとか土壌が違うとかいうのは当然のことで、それを乗り越えている工夫の先にいろいろなものが見えてきます。